てつさらです。

スコット・マクラウドの『マンガ学』という本は、マンガというものを考える際に、いろいろと示唆を与えてくれる、素晴らしい研究書です。残念ながら、いまは絶版みたいですが……。

この本の中で、マンガという静止したコマの中で、いかに時間や運動の流れというものを表現するのか、そのいくつかの手法が紹介されています。

マンガは、映画とは違って動く絵で時間の経過を示すことはできません。そのため、さまざまな技巧が凝らされているのです。

ここでは、一コマの中で、動きや時間の経過を表現する技法について、『マンガ学』にそってご紹介します。(複数のコマを使って表現する方法については、また別の機会に……)

マンガにおける「時間」の表現には2つあります。「音」「動き」です。

このうち「音」はさらに2つに分かれます。「ふきだし」「効果音」です。

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例えば、上のコマでは、「ふきだし」「効果音」によって、時間の幅が表現されています。一瞬を切り取ったように見えるこの一コマのなかに、実は30秒ほどの時間の流れが凝縮されているのがわかります。

特に日本のマンガでは、日本語に多くあるオノマトペ(効果音)によって、時間の流れが表現されているものが非常に多くあります。これは、(『マンガ学』に載っている例ではありませんが、)『GANTS』の中の一コマです。「キキキキ」というブレーキの効果音が、電車が間近まで迫ってきている緊迫した動きを表現しています。
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次に、「動き」について。「動き」の表現によって時間の流れを表す表現としては……、

「動線」はその最も単純な表現です。

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「残像」は、その進化形です。

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さらに進化したのが、「ストリーク効果」
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それから「ブレ」

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被写体と一緒に視点が移動するかたちの「背景の流れ」も、スピード感を表します。mangagaku3_2

 

その進化したのが「主観移動」

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『マンガ学』で紹介されている技法はこれくらいですが……。

以前の投稿で紹介した、竹宮惠子さんが言うところの「主観的マルチ多点透視」も、時間の流れを一コマで表現したものと考えることもできます。遠くから近くへと、だんだんと近づいていく複数の視線の動きが凝縮されているからです。
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以上、てつさらが、さらっと書きました。