てつさらです。

マンガのコマ運びには、それなりに法則があるようです。

例えば、このブログの記事には、AとBという二つのコマ運びを対比しつつ、その暗黙のルールについて書かれています。

それによれば、基本的に、マンガのコマ運び、読み方のルールは「上から下」「右から左」(アルファベットなど、横書きの文字を使う言語では、「左から右」になると思いますが……)で、ほとんどのマンガは、このルールに基づいてコマ割りされていると思います。

例えば、『キャプテン翼』のこの見開きを読む場合、ほとんどの人は赤線の流れで視線を走らせるでしょうし、作者も当然、その流れを予め意識して作品を描くことでしょう。

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ただ、このルールを破格に使っているケースがあります。

(度々の引用で申し訳ありませんが)『竹宮惠子のマンガ教室』で引用されている、竹宮さん自身の作品『風と木の詩』のある1ページです。

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このページについては、同書で次のように説明されています。

竹宮:このコマ割りのしかたっていうのは、すごく私に特徴的な形なんじゃないかなと思うんですけど。まず一コマ、枠線のないコマが来て、横長のコマが入るっていう。で、下も枠線がない。これもよくやるんです。
―そうですよね。裁ち切りのコマ。裁ち切りは少女マンガに多いと言われますが、その中でもこれは面白いですよね。上と下が全部繋がっているわけじゃなくて、でもある意味では繋がってて、この一枚の中に時間の経過が縦の流れで表されている。で、横にも時間の経過があるわけですけど、雰囲気が基本的に縦に繋がっていて、説明と時間の経過が横軸にある。
竹宮:そうですね、いわゆる動きの線というのは基本的に横に流れる線で描くのが一番感じやすいんです。空気の流れみたいなものが。でも私は、ただ横に流れるのはあまり好きじゃなくて、できれば斜め右上から左奥へとか、立体的な流れじゃないとなんか納得できない(笑)。それが三次元的な描き手のクセなんですけど、そういうふうに流れる空気を描きたいので、先に上のコマと、下のコマが決まっちゃうわけです。それが決まっちゃった後で、その間に他のコマもこの線の流れに沿って継いでいく。
―読み慣れていない人は、この真ん中に並んだコマを右から読むのか左から読むのか迷う人もいると思うんです。これは実際には上のコマに描かれた木が、視線としてそのまま滑っていくわけですよね。
竹宮:はいそうですね。
―で、視線は右から左に流れていくわけですけれども、そこらへんが動線、言ってみれば、斜めの線として生きてくる。
竹宮:そうですね。ここに手をつくシーンがあるのもそういう意味で、引き込みですね。
『竹宮惠子のマンガ教室』より引用)

なるほど。

つまり、このページでは、単線的なコマ運びではなく、上から下へという縦の流れと、右から左へという横の流れが、ページの中央部分で交錯しているわけです。この場合、縦の流れが雰囲気を醸し出し、横の流れが説明をしている、といった関係になっているのです。この二つの流れは、繋がっていると同時に、離れているとも言えます。

これは、明らかに『キャプテン翼』の例でみたような、コマの順番通りに読者に視線を走らせてもらい、時間軸にそった話の流れを把握してもらおう、そういう意図から発したコマ割りではありません。(だから、何が描かれているのか結局よくわからない、ということにもつながります。)

 

このような複雑な時間の交錯を、映画で表現するとしたらどうでしょう。

うまい例を挙げるのは困難ですが……。

強いて挙げるとするなら、リチャード・フライシャー監督の『絞殺魔』でのマルチ画面的な表現になるのかもしれません。

TheBostonStrangler

以上、てつさらが、さらっと書きました。