てつさらです。

私が映画をきちんと見だしたのは、大学入学のため、上京して以降のことです。

私が育った土地は、ひどい田舎で、映画館すらありませんでした。ですので、年に数回、都会に映画を見に行くくらいでした。あとは、もっぱらテレビの洋画劇場での視聴でした。

上京して映画館で初めてみたのが、大学近くの名画座で二本立てで上映されていた、フェリーニの『81/2』と、ゴダールの『気狂いピエロ』でした。この2本を立て続けに見たことで、その後の私の映画人生は決定されたと言っても過言ではありません。それほど、この2本は、うぶな私には衝撃的でした。

『81/2』のあのラストの全員でのダンスシーンと、『気狂いピエロ』のあのつんのめるようなカットつなぎ!

ちょうどそのころ、ミニシアターブームで、ヴィム・ヴェンダースやらダニエル・シュミットやらテオ・アンゲロプロスやらジム・ジャームッシュやらレオス・カラックスやら……そういう、いわゆるアート系の映画が、小さな劇場を中心に次々と公開されていました。けっこう、その手のミニシアターにも熱心に通っていました。

それから、決して忘れてならないのが、フジテレビの深夜(確か金曜夜)に放送されていた「ミッドナイトアートシアター」、アート系の映画を、CMなし、ノーカット・字幕スーパーで放送するという実に画期的な番組でした。当時のフジテレビは、本当に時代の最先端を行っていたと思います。この番組で、私は80年代以降のゴダールの映画など、先端的な作品をかなり見ました。

また、この頃からレンタルビデオが普及しはじめ、昔の名作を手軽に見ることが出来るようになりました。例えば黒澤明や小津安二郎といった邦画の名作や、ジョン・フォードやオーソン・ウェルズ、フリッツ・ラング、ジャン・ルノワールといった洋画の巨匠たちの作品も、レンタルして見ることができるようになりました。

映画評論の分野では、なんといっても蓮實重彦氏の影響力は絶大でした。その他の分野では彼の業績はあまり評価していない私ですが、映画評論では、彼の批評にかなり影響を受けて、いろいろな映画を選んで見ていました。

80年代から90年代にかけて、私にとって映画は、本当に刺激的なメディアでした。ヴェンダースやアンゲロプロスの新作が公開されると聞いただけで、本当にワクワクしたものです。

しかし、2000年代以降、私の映画に対する情熱はどんどん失われていきました。その原因が、私自身の中にあるのか、あるいは私の外にあるのか(例えば、いい映画というのが実際にどんどん少なくなっている、とか)、それは分かりません。

今では、映画館に足を運ぶ機会というのは、ほとんどなくなってしまいました。以前は、年間100本~200本くらいは見ていたビデオやDVDでの視聴の本数も、劇的に減ってしまっています。

もう、私にとって映画という分野は、あまり魅力を感じないものになってしまったのです。

でも……、できるなら、上京後初めて名画座で『81/2』と『気狂いピエロ』を見たときのあの衝撃と興奮を、もう一度味わってみたい、そんなことも感じています。

以上、てつさらがさらっと書きました。