てつさらです。

犬にアイスクリームを食べさせるというのは今では当たり前のことかもしれません。

私自身、我が家のポプリ(トイプードル)に、しょっちゅうアイスクリームを食べさせています。私がアイスを食べていると、必ず膝の上に乗ってきて、せがむのです。

でもちょっと前までは、犬がアイスを食べるということは、けっこう稀なことだったような気がします。

Libby Hospice:  Another Ice Cream Cone - Photo 3
Libby Hospice: Another Ice Cream Cone – Photo 3 / pmarkham

ところで、村上春樹の短編小説に『土の中の彼女の小さな犬』という作品があります。その中で、犬にアイスクリームを与える描写が出てきます。

「僕」は、あるリゾートホテルで、魅力的な女性と知り合いになります。彼女は幼い頃、犬を飼っていて、その犬にアイスクリームを与えていたというのです。

「昔、マルチーズを飼ってたの」と彼女は言った。「子供の頃よ。父親に頼んで買ってもらったの」
―中略―
 彼女はどこかから煙草をとりだして、一服した。それからマルチーズの話をつづけた。
「とにかく、犬の世話が全部私がやることになってたの。八つの時よ。食事をやったり、トイレの始末をしたり、散歩させたり、注射につれていったり、蚤取り粉をつけたり、なにもかもやったわ。一日もかかさなかったわ。同じベッドで寝たし、お風呂も一緒に入ったし……、そんな風にして八年間一緒に暮らしたの。とても仲が良かったのよ。私には犬の考えていることがわかるし、犬には私の考えていることがわかるの。例えば朝出かける時に『今日はアイスクリーム買ってきてあげるからね』って言っておくと、その日の夕方はちゃんと家の100メートルくらい手前で私を待っているのよ。それから……」
「犬がアイスクリームを食べるんですか?」と僕は思わず訊き返した。
「ええ、もちろん」と彼女は言った。「だってアイスクリームよ」
「そうですね」と僕は言った。
『中国行きのスロウ・ボート』所収「土の中の彼女の小さな犬」より引用)

「僕」同様、私もこの作品を初めて読んだとき、「え?犬がアイスクリームを食べるの?」と、ちょっとビックリしたのを覚えています。

この作品は、今から30年以上前に書かれた作品です。その頃は、まだまだ犬がアイスクリームを当たり前に食べる時代ではなかったと思います。

でも、今では、犬にアイスクリームを食べさせると言っても、誰も驚かないでしょうね。

もちろん、犬にアイスクリームを与えるというのは、健康上、あまりいいことではありません。糖分とか脂肪分とか乳成分とか、いろいろ問題があるみたい……。(今では、そのような問題を考慮した犬専用のアイスクリームも売り出されています。)

その証拠に(?)、上記の小説の犬は、わずか八歳で死んでしまっています。けっこう早死にですね。

私も、ポプリにアイスを与えながら、けっこう罪悪感に苛まれています。でも、膝の上にちょこんと乗っかり、じっとこちらを見つめられると、つい、あげちゃうんですよね。

以上、てつさらが、さらっと書きました。