去年印象に残った番組といえば、 NHK・BSで放送された『映像の世紀プレミアム』でしょうか。

ただ、その元になった番組『映像の世紀』や『新・映像の世紀』と比べるとやや迫力不足の印象は否めませんでした。

前の2番組は時系列順に描かれていて、特に第一次世界大戦と第二次世界の映像が圧倒的でした。

数千万人の人間が、まるで虫けらのように死んでいった二度の大戦の映像の迫力はあまりにも圧倒的すぎて、それ以降のあらゆる歴史が霞んでしまうほどでした。(後の時代になればなるほどだんだん退屈になっていくという印象だったのです。)

こういう言い方をすると誤解を受けるかもしれませんが、やはり人間の心を最も揺さぶるのは、人間の死なのでしょう

戦争においては、「今、ここ」ということが絶対的な意味を持ちます。例えば、原子爆弾で死んだ人たちは、まさに原爆が炸裂した「今、ここ」にいたからこそ、犠牲になってしまったのです。わずか数時間、数キロメートル、時間や場所が違っていれば、死ななくてすんだかもしれません。

戦場においても、まさに「今、ここ」にその場にいて、銃弾がその人の頭や胸を貫通したからこそ、亡くなってしまうわけです

二度の世界大戦は、まさに「今、ここ」の意味を、われわれ人類に見せつけているのかもしれません。

「今、ここ」というこの絶対的な時空の意味をわれわれに教えてくれているという意味で、もしかしたら二度の世界大戦はそれなりに意味のあった出来事だったのかもしれません(これも非常に誤解を受けやすい表現ではありますが…)。