てつさらです。
去年見た NHK の番組に、『プロフェッショナル・仕事の流儀』のスペシャル番組がありました。
「芸人として今後進むべき道や方向性がグラついている。プロフェッショナルたちと話すことで、軸を1本ピシッと入れられれば……」、そう願う芸人の岡村隆史が、何人かのプロフェッショナルな人物と対談するという番組でした。
岡村隆史が出会ったプロフェッショナルの人物の1人に、「奇跡のリンゴ」で有名な青森のリンゴ農家、木村秋則氏がいました。
木村氏は、絶対に不可能と言われた無農薬リンゴの栽培に成功した人で、その著作はベストセラーになりましたし、映画化もされたので、ご存知の方も多いと思います。
私はその著作も読んでいないし映画も見ていないので、番組で紹介された内容しか知らないのですが、記憶している限りで、その対談の内容を紹介すると……。
やはり無農薬でリンゴを作るというのはかなり無謀な挑戦だったそうで、木村氏は何度も何度も失敗をし、経済的にも追い詰められて、自殺さえ考えたそうです。
そして、死に場所を探して森の中をうろついていた時に、野生のリンゴが立派に実をつけていることを発見します。
その時に木村氏は、自分は今までリンゴの実を収穫することしか考えていなかったことに気づきます。大事なのは、そのリンゴの木が生えている土を健康にすることだということを悟るのです。
土が健康になれば、その上で育っているリンゴの木も健康になります。そしてリンゴの木が健康になれば、農薬など使わなくても立派な実をつけることができるはずなのです。
この発想の転換から、木村氏は健康な土を作ることを第一に考えるようになり、それによって、無農薬のリンゴの収穫に成功するのです。
このリンゴの話は、他の分野でも大変役に立つのではないでしょうか。
たとえば企業活動というものを考えてみましょう。企業をリンゴの木に喩えると、土は、企業が活動している地域の人や経済です。
地域の人や経済が元気であれば、そこで活動する企業も元気になるに違いありません。そして、企業は健全な形でリンゴの実=収益を確保することができるのです。
企業が活動している地域の人や経済がだめになれば、いくら一生懸命企業が活動しても、十分な収益を上げることはできないでしょう。かりにあげることができたとしても、それは、沢山の農薬を使うような非常に不健全なかたちでしか実現しないことでしょう。
ここに企業の CSR 活動の意義があります。企業は CSR 活動によって、自分たちが活動する地域の人や経済を元気にすることができます。それによって長い目で見れば企業自身も健全になり、健全なかたちで収益を上げることができるわけです。
私には、今の日本は、土壌自体がかなり劣化しているように思えます。それは、たとえば小泉内閣によって労働者派遣法が改正された頃から、特に若者層で派遣社員が増えて、格差が広がったことも大きかったと思います。
厚生労働省の統計では、現在の日本では、ほぼ6人に1人が貧困ということです。人口にして、2000万人にも上ります。このように日本の土壌はどんどんと不健康になっているのです。
まずこれらの問題を解決して日本の土壌をもう一度豊かにすることが、最優先の課題ではないかと思うのです。
以上、てつさらがさらっと書きました。