てつさらです。

昨年知ったニュースで、個人的にかなりショッキングだったのが、抽象絵画などの近代美術はかつてCIAの「兵器」だった、というもの。

このサイトを見て知った情報です。

Wikipediaにも同様のことが書かれていますね。

抽象表現主義は50年代前半、思想戦・情報戦の武器としてCIAの関心を引くところとなった。東側諸国との冷戦のさなか、CIAは抽象表現主義の美術家や批評家を援助し世界に広めることにより、アメリカには「思想の自由」と「表現の自由」があり、政治・軍事・経済だけでなく文化面でも大きな成果を成し遂げたという証明にできると考え、ソビエト連邦の芸術や文化の硬直性に対し有利に立てると考えた。
アメリカや主にヨーロッパを中心とした進歩的文化人など、世界中の文化人に対するソビエトの影響力は圧倒的で、アメリカは哲学や芸術の世界では常に悪役であり劣勢にあった。この劣勢に対し、CIAは美術も含めたアメリカの芸術の自由さと斬新さ、先端性をアピールすることで、文化人に対するソビエトの影響をそぎ、アメリカの影響を高めようとした。また西洋の芸術のモダニズムや前衛の成果や運動は、今やアメリカの美術界が引き継いだと証明するために、抽象表現主義とその理論が利用された。こうして抽象表現主義は、「冷戦下の文化戦争の尖兵」となることになる。
Wikipediaより引用)

このような考えのもと、CIAは、知識人・歴史家・詩人・画家たちを人知れず支援し、世界35カ国にあるそのオフィスで20以上の雑誌を出版、抽象表現主義の絵画を宣伝しました。また、さまざまな抽象表現主義の展覧会がCIAの資金で開催されたそうです。

このことは、かなり前から知られていたことらしいのですが……、私は去年まで知りませんでした。こういう前衛的な文化の分野でも、知らず知らず、政治のパワーが働いていたなんて……。

個人的には、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニング、マーク・ロスコなどのアメリカの抽象絵画がけっこう好きだったので、この事実は私にはかなり衝撃的でした。特に、前衛芸術は、そういう政治の力とは対極にあるものだと思っていたので、ショックは一層強かった。(この記事を読む限り、当時のアーティストたち自身も、そのことに気づいていなかったようです)

このことを知った以上、もう以前のように気ままに現代アートを鑑賞することはできなくなりますね。「現代アートが好きなオレって、趣味いいでしょ?」みたいな無邪気なセリフはもはや通用しない、ということです。

もちろん、どんな時代にも芸術の庇護者はいて、昔の王様や貴族、富豪たちが、CIAのような政府機関になった、と考えればいいのかもしれません。

また、ブレイデン氏は「『システィーナ礼拝堂は世界で最も美しい造形物だ』と言う人がいますが、大富豪や教皇がいなければ芸術は存在しませんでした」として、「芸術が認識されるには、それを支援する、富を持った誰かが必要です」と語っています。
前述のサイトより)

しかし、このケースはそれとも少し違って、芸術と政治というものにもっと根源的な問題を投げかけているように思えます。

以上、てつさらがさらっと書きました。